想いが伝わる作品に コンセプト設定のヒント
ものづくりを進める中で、技術を磨くことや見た目を魅力的に仕上げることは大切です。しかし、そこに「なぜこれを作ったのか」「何を表現したいのか」といった、作品に込める想いや背景があることで、より見る人の心に響き、共感を生むことがあります。作品の核となる考え方を明確にすることは、単なる説明文を超え、作品の魅力をより深く伝えることにつながります。
作品にコンセプトを持たせることの意義
作品におけるコンセプトとは、その作品がどのような考えや意図に基づいて生まれたのかを示す、核となる考え方です。これは、作品の見た目や機能だけでなく、作り手の内面や、作品を通して伝えたいメッセージ、あるいは作品が生まれるに至った背景などを含みます。
コンセプトが明確であると、作品は単なる「物」としてだけでなく、ストーリーや意味を持つ存在として捉えられやすくなります。見る人は、作品そのものの魅力に加え、そこに込められた想いに触れることで、より深く作品と繋がることができます。これは、作品を共有する場において、他の人との対話や共感を生むきっかけともなります。
コンセプトを見つけるための視点
自分の作品にどのようなコンセプトを持たせられるか、どのように見つけるかについて、いくつかの視点があります。
1. 制作のきっかけを振り返る
なぜ、その素材を選んだのでしょうか。なぜ、その色や形にしたのでしょうか。漠然と始めたものづくりでも、必ず何らかの小さなきっかけや理由は存在します。最初に感じた「これを作りたい」という衝動や、特定の技法を試したかった理由、使用した素材に惹かれた背景などを振り返ってみましょう。
2. 伝えたい感情やメッセージを考える
作品を通して、見る人にどのような感情を持ってほしいでしょうか。喜び、安らぎ、驚き、あるいは何かについて考えてほしいというメッセージかもしれません。特定のテーマ(自然、記憶、感情など)がある場合は、そのテーマについて自分がどのように感じているのかを掘り下げてみましょう。
3. 誰に、どのように見てほしいかを想像する
作品をどのような人に見てもらいたいか、そして、その人たちが作品を見てどのように感じてほしいかを想像することも有効です。特定の空間に飾られることを想定するのか、身につけて楽しんでもらうことを想定するのかによっても、コンセプトの方向性は変わってきます。
4. 日常や自分自身と作品を結びつける
日々の暮らしの中で心が動いた瞬間、興味を持っていること、大切にしている価値観など、自分自身の内面や経験と作品を結びつけて考えてみましょう。作品は、作り手の内面や視点が映し出される鏡のようなものです。個人的な体験や感情が、作品に深みを与えるコンセプトとなることがあります。
コンセプトを形にするヒント
コンセプトの種が見つかったら、それをより具体的な形にしていくステップです。
キーワードを書き出す
思いついた考えや感情、伝えたいメッセージに関連するキーワードを自由に書き出してみましょう。いくつかの言葉を並べることで、コンセプトの輪郭が見えてくることがあります。
一貫性を持たせる
コンセプトが決まったら、作品の要素(素材、色、形、技法、デザインなど)がそのコンセプトと調和しているかを確認します。要素に一貫性があることで、作品全体を通してコンセプトがより明確に伝わります。
タイトルや説明文に反映させる
作品そのものだけでなく、タイトルや説明文にもコンセプトを反映させましょう。どのような想いを込めたのか、制作時にこだわった点、作品に隠されたエピソードなどを言葉にすることで、見る人は作品への理解を深めることができます。共有サイトで作品を公開する際には、こうした説明文が作品の魅力を伝える重要な要素となります。
制作の過程を楽しむ視点として
コンセプトを考えることは、作品完成のためだけではありません。制作に行き詰まった際に、立ち戻るべき方向性を示す羅針盤となったり、新たなアイデアを生み出すヒントになったりすることもあります。また、コンセプトについて考える過程そのものが、自己探求の時間となり、ものづくりをより豊かなものにしてくれます。
コンセプトは、必ずしも難しく考える必要はありません。「なぜかこの色を使いたかった」「この素材の手触りが好き」といった、素直な感覚から生まれることもあります。大切なのは、自分の作品ともう一歩深く向き合ってみるという姿勢です。
作品に込められた想いや背景を知ることは、見る人にとっても、作品への愛着や共感を深めるきっかけになります。ぜひ、あなたの作品に秘められたコンセプトやストーリーを見つけ、共有してみてください。それが、ものづくりをさらに楽しく、そして他者との繋がりのある豊かな活動にしてくれるはずです。